柑橘類(シトラス)の文化史 歴史と人との関わり

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3日掛かってやっと会社の新PCへの移行が完了しました。
しかし、無線LANマウスのレシーバーが接続されてしまうとタッチパッドが使えなくなると言うね。
マウスを忘れて移動してしまい、「あ゛」となる事が多々。
一体、何時になったら慣れることができるのでしょうか…。

今日は、2回目の入院中から読み始めてやっと読み終えた本の紹介。

『柑橘類(シトラス)の文化史 歴史と人との関わり』(Pierre Laszlo著/寺町朋子訳/オーム社刊)

身も蓋もなく一言で言ってしまえば、欧米を中心とした柑橘類の歴史を、様々な側面から見ていく本です。
因みに著者はフランス人の化学者で、エコール・ポリテクニークの化学教授を務めたフランスの有機合成化学の権威であり、日本の大学でも有機合成の教科書として使用されている本が発行されていますが、大学を退官した後は、一転して著述業に転身して様々な本を執筆しています。
元々化学者ですから、本書の後半では、柑橘類から分泌される化学物質についての記述とか、砂糖と蜂蜜の物性の違いとかが出て来て、どこが文化史だろうと思うところはあったりして。

また、所々に柑橘類を使った料理やお菓子のレシピが顔を覗かせていますが、欧米の本にありがちな、欧米独特の食べ物(特にハーブとか香味野菜とか)が出て来ることは余り無いので、日本人でも取っつきやすいレシピになっていたりします。

本書の執筆動機ですが、南宋の官僚にして、柑橘類の研究者である韓彦直という人が書いたの『橘録』という本があるのを知って、この本を作ろうと思い立ったそうです。

元々、柑橘類は中国で栽培されていたものが伝播したもの。
西の方へは中国から中央アジア、そしてペルシャやトルコを経てイスラームの波に乗ってスペインやイタリア半島に定着した外来植物です。
西の果ては地中海地域で長らく停滞していましたが、温室の発展と共にフランスや英国など寒い地域でも栽培され、更に海を渡って南米大陸へと渡り、ブラジルで一大発展を遂げます。
北米へは、南米から渡ってきたのもありますが、19世紀の帝国主義の時代に中国からプラントハンターが入手したものが改良されて、温暖な地域で定着しています。

当然、気候に問題があって、定着しなかったものもありますが、地道な栽培や研究の結果、その土地の気候や風土に合うものが創り出され、また栽培方法も改良されて、例えば米国のフロリダ州やカリフォルニア州では一大産業になっています。
因みに、日本でよく見かける(最近は見かけないかな)Sunkistブランドは、カリフォルニア州の青果協同組合が発展して巨大な会社組織となったものです。

また、柑橘類が及ぼした欧米の文化への影響を考察したり…例えば色、そしてそこから発展した絵、詩や小説、建築物、広告媒体への影響、勿論、御国料理への影響とか…。

反面、著者が化学者であることから、歴史的な関わりと言っても、経営史的な部分はかなり弱く、ブラジルの会社による柑橘類の濃縮果汁独占の過程とか、奴隷労働の経過、Sunkistやミニッツメイドなどの米国の果実栽培企業の世界進出と独占の経過とかには余り触れられていません。
なので、こうした部分を期待する向きには、お勧めできません。

更に日本向けの本として致命的なのは、こうした考察が、欧州と南米と北米大陸に偏ってしまっていることで、柑橘類の本家本元である中国大陸での柑橘類の発展の歴史とか、それが日本に伝播した過程と独自の発展という視点がすっぽり抜け落ちていることです。

端書きや結語のところで、韓彦直に宛てて書いている部分を読むと、中国の柑橘類にも触れているのかと期待するのですが、そこは欧州の人。
アジア蔑視とは言いませんが、この部分はかなりの練り込み不足であって、相当残念でした。

ま、全体で脚柱も含め500ページ近い本なので、途中ダレる部分はあるのは否定しませんが、欧米の柑橘類の事情を知るには最適な1冊かな、と思います。

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